山口家庭裁判所下関支部 事件番号不明 判決
被告人 水島克己
主文
被告人を罰金壱万五千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金壱百五拾円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人に負担させる。
理由
犯罪事実
被告人は山口県下関市大市新地町四三番地で母水島カズ名義で酔月と称する待合を経営しているものであるところ、右営業に関し従業婦として昭和一三年一一月二〇日生れのF子を雇入れて使用し、同女の年齢を確認する適切な方法を尽さないで、同女をして明美という芸名で昭和三一年八月四日頃より同年一〇月三日頃までの間右営業所で氏名不詳の客六四名位を相手に対価を得て情交せしめ以て児童に淫行をさせたものである。
証拠
一 証人F子の当公判廷での供述
二 押収してある明美ことF子名義の水揚表写(昭和三二年領第一号の一)の存在並びに内容記載
三 F子に対する戸籍抄本の記載
四 被告人の検察官に対する供述調書の記載
五 被告人の当公判廷での供述
被告人及び弁護人の主張に対する判断
被告人及び弁護人は当公判廷で被告人は判示の当時判示F子の年齢を知らなかつたことに過失がなかつた旨主張する。
しかし、およそ児童にして従業婦たらんとする者がある場合、児童本人または仲介人等が満一八歳未満であることを秘するため、雇主に対し他人に対する戸籍騰、抄本を悪用するとか種々術策を弄して既に法定年齢に達せる婦女の氏名を冒用し虚偽の年齢を告知することは屡々存する事例であり、殊に仲介人のみ介在し身許が詳かでない場合には一層この様な術策が行われ易い危険があるものである。故に、かくの如き場合、従業婦たらんとする婦女の年齢を確認するためには、その婦女または仲介人が称する氏名年齢を知るだけでは足れりとせず、遡つて当該婦女の身許を調査し、もし不審の点あらば官憲の協力を求めるなどその人違でなきや否やを確認し、よつて児童を淫行に導く一切の原因を排除するため万全の措置を講ずることは、被告人の如き業種にたずさわる者に課せられた義務である。
しかるに、被告人は自ら主張する如く、判示橋本または仲介人が称する氏名年齢のみを直ちに信用し、それ以上進んで同女の身許を調査しその真実の年齢を確知する何らの措置を採らなかつたものであるから、被告人は同女の年齢を知らなかつたことに過失がなかつたと言えない。
また、判示橋本が従前他の同業者方で稼働していたという事実だけでは、もちろん被告人の無過失を容認する理由とはならない。
適条
児童福祉法三四条一項六号、六〇条一項、罰金等臨時措置法二条一項――罰金刑選択――刑法一八条、刑事訴訟法一八一条一項本文。
(裁判官 横山正忠)